依り代がたどる道 第12歩目


 

 

時代の移り変わりを眺めていることしかできない。傍観者といった方が正しいだろうか。

「想定外の事態が起きた場合。彼らから情報を集めた後、国の復興を手伝わせるんだそうです。

そして世界を元に戻した後、また旅が始まります。それの繰り返しですね。

神様が直接手を出して何かすることは絶対にないそうです」

崩壊した国で絶望している人々の目の前に現れるだけでも、希望になると思う。

神様はそれすらも、しない。

「とある時期を境にして、依り代たちはどこかにごっそり消えています。それがもう数十年も前の話です」

僕が生まれる前の話だ。何がきっかけで彼らが消えたのだろうか。

専門書にでも載っているだろうか。

「それに対応するために、『依り代』たちは呼び出された」

神様が呼び出したはいいものの、それに対応しきれなかった。

それ以降、依り代が増えていないのも、それが原因だろうか。

大きく数を減らしても、彼らの役割は変わらないらしい。

今も世界を回っているのだろうか。

「まあ、これくらいですかね。現状で分かったことは。質問ありますか?」

とりあえず、僕の説明はこれで終わった。

「神様って何もできないんだな。ていうか、やる気なさすぎだろ」

つゆが吐き捨てるように言った。まさにその通りだから、何とも言えない。

決してやる気がないわけではないのだろうが、思っていた以上に干渉していなかった。

放任主義なのだろうか。よく分からない。

 

「ていうか、何で私が神様の使いだって分かったんだろうね。だって、神様は誰にも教えていないんでしょう?」

「確かに。情報元は何だろう」

「神様に通じる何かがいる、とか。私みたいに他に『依り代』がいるのかも」

「裏切り者ってことか……そこらへんは戻ってみないと分からないだろうな」

「戻る? どこに?」とつゆ。

「……いや、そもそもシロを連れ戻すためにここまで来たんでしょう? 

まあ、話がかなり飛んじゃったのは事実だけど」

彼はそういえばと、小さな声で言った。それを聞いた僕とはなはため息をついた。「目的を忘れるな」と言葉が被ったのは言うまでもない。

「ていうか、先生も戻るのか?」

「まあね。一生ここにいろって言われたわけでもないから。

とりあえず、上に報告するかどうかは置いておきましょう。全ては向こうへ戻ってからです」

「……」

「お二人の準備が終わったら、いつでも声をかけてください」

「だってさ。なるべく早くね」

彼がここを離れたくないというのは、分からないでもない。

向こうよりもはるかに過ごしやすいのだろう。だが、ここにいる意味はない。目的は果たされた。

 

←1 

 


依り代がたどる道

 →13歩目に進む

 →11歩目に戻る 

 →目次に戻る

 →ホームに戻る