ただ、牢獄から抜け出したのも、僕のところにまで来たのも、自分でやったとは思っていない。
自覚したのはすべて起きた後だ。
「で、あの二人を悪者のように言ったわけだ?」
「だって追っかけてくるのは分かっていたし……怒られると思ったんだもん」
僕がそう指摘すると、シロは目を泳がせた。
「神のみぞ知る、とはよく言ったものだが。大分面倒なことになってきているな。
もしかしたら誰か他に見ているかもしれませんね。その時のこと」
「だとしたら、今頃大騒ぎになってるはずだろ? こんなに静かなわけがない」
一般人からの目撃情報がこれまでなかったのが不思議な話だ。
誰も見ていない時を狙って彼女に竜巻を起こさせていたのだろうか。
それなら、あの子を監視役の目の前で消えてみたのはなぜだ。
わざわざ、そんな派手な真似をして見せた。疑問は尽きない。
「もういっそのこと、聞きに行きますか? 神様に」
ふと思いついたことをそのまま口に出した。
「え?」
三人が一斉に僕を見る。
「奴の根城は分かったんですし、何より彼女がいるんですから。
自分の目がお友達を引き連れてやってきたのを無視するわけにもいかないと思いますよ」
簡単なことだ。分からないことは、彼女をよこした神様に聞いてしまえばいい。
彼女を通してずっと見ているのだから、今の会話だって聞いているはずだ。
「何かすごく簡単そうに言うよな……」
「しかも貴方が言うと本当にできてしまう気がするから怖いんですよ」
二人は肩を落とす。
「そんな期待持たれても仕方がないんですけどねえ」
そもそも、この人たちも一緒に行くことが前提の上で話している。
僕だけが行っても仕方がない。
「ねえねえ、神様のとこまでどうやって行くの?」
シロはひとり、目を輝かせている。
「多分、鉄道かな。島にいた時も話したけど、大陸を横断できる鉄道があるんだ。
それに乗って大体三日で隣町に着くよ」
「そんなに乗ってるの?」
「思っていたより長いのな」
「そんな旅行じゃないんだから……」
はなはため息をついた。このときは四人で神様に会いに行くつもりだった。
誰も言わなくとも、そう思っていたに違いない。少なくとも、僕はそう思っていた。
だが、思い通りにいくはずもない。見えざる神の手は、確かに存在していたのである。
←2