依り代がたどる道 第25歩目


「そんなに悪い奴じゃないんだけどね。色々と飢えてるだけなんだと思う」

「飢えている、ですか」と、ぼたんは繰り返す。

「だから、構ってるのか?」

「構っているのとはちょっと違うかな。向こうから来るんだよ。何も言わなくても、僕を見つけたら勝手に来る」

「まさに犬だな」

 くちばは笑う。本来の自分の主人より懐かれているのはどうかと思うが、時間の問題だ。

僕が気にして焦っていても仕方がない。

「まあ、別にいいんだけどねえ……変になめられているよりかはずっと楽だし」

 それもまた事実だ。はなみたいに反抗的な態度ばかり取られていては、面倒で仕方がない。

気楽に付き合えるのも悪くはないのだ。

「ちなみに、あの青いのがうちんとこに来てたら、どうしてたんだ? 可能性としては、なくはなかっただろ?」

「満場一致で追い出すんだろ? 知ってるよ」

「俺らの意見じゃなくて、隊長はどうしたいんだ?」

考えたこともなかった。医療班の中に、つゆを迎え入れる。

正直、想像もつかない。 それでも、はなの元にいた方がいいような気もする。

「ま、最後まで付き合うつもりなんでしょ?」

「そりゃねー。乗りかかった船ですから」

「嫌になったらいつでも船から降りてこい。話くらいは聞いてやるさ」

「じゃあ、お土産話にでも付き合ってもらおうかな」

ちゃんと帰ってくる場所がある。それだけで安心できる。 

数週間後に戻ってくることを改めて、決意した。 

 

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