依り代がたどる道 第28歩目


 依り代探しが始まった。僕はしぐれと共に、裏通りを探索することになった。

初めて来た場所なら、確実に迷子になるとのことだ。

人通りの多いところから外れただけで、雰囲気が変わる。

 通りを歩く人も少ないし、建物の雰囲気もどこか暗い。太陽の光が当たらず、影が落ちているからだろうか。

道を行く人々も不思議そうに僕たちを眺めて来るだけだ。そんなに新参者が珍しいのだろうか。

「うーん……こっちには来てないみたいだ」

しぐれは首をひねりながら、地図を見ている。町一帯の地図には、依り代を示すものは何も現れていない。

ここにいないということは、もう砂漠の神殿に行ってしまったのだろうか。

「行きそうな場所に心当たりとかない?」

 この町に来るのも久しぶりのことだ。どこに何があったか、うっすらとしか思い出せない。

記憶に残っているその場所も、子どもが行くとは思えないところばかりだ。

依り代としての心当たりなら、いくつかある。竜巻を起こしたところを誰かが見たかもしれない。

だが、今はただの子どもとして探している。どちらにせよ、何の役にも立たない。

「白い髪の女の子、なんだよね? すぐに見つかりそうなもんだけどなあ」

人を探すというより、依り代として探してしまった方が早いような気がしてきた。

それなら、図書館で文献を探した方が早いだろうか。それとも、砂漠の神殿に関する情報を探した方がいいだろうか。

人探しではなく、依り代として探す方法を考え始めたそのときだった。

 言葉にならない言葉を喚き散らしながら、誰かが曲がり角から逃げてきた。

僕たちもその曲がり角へ向かう。見慣れた青髪がしゃがんで、彼に何か話しかけているようだった。

「そこ! 何やってるんだ!」

「うわっ! じゃあな!」

彼は彼でその声に驚きながら、その場を走り去った。

隣にいた僕に気づいていないようだった。一体、何をしていたんだろう。

どうやら、ここは共通で使われているゴミ捨て場らしい。

適当に詰め込まれたゴミ袋は山となり、青いポリバケツはふたが外れ、中身が見えている。

その奥に10代前半ごろと思われる黒髪の少年がいた。洋服についたほこりを手で払っている。

「一体、何があったの?」

「別に。何もない」

「何もないのに、あんな風に逃げるわけないと思うんだけど」

確かにその通りだ。あの逃げる姿は、何かまずいことをした子どものようだった。

 

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