天井の宇宙人

 

窓ごしにきらめく太陽の光にこいこがれていました。

何もかもがまぶしく見える窓ごしの世界に。

 

周りの友だちのように、外で遊べればどれほどよかったか。

本の中にいる住人は優しいけれど、彼らはその世界でしか生きていない。

 

結局のところ、閉ざされた世界にいるのです。

 

分厚い紙の束の中で生きる彼らも、病院のベッドから抜け出せない私も。

いいえ。本の住人ですら、閉ざされた世界の中でちゃんと生きている。

彼らの呼吸音が私には聞こえる。

 

その世界をのぞく私はどうなんでしょう。

同じ様に呼吸はしているけれど。

本当に生きていると、果たして言えるのか。

 

何度考えても、答えは出ません。

機械のように息を吸って吐くだけの私に、生きる意味はあるのだろうか。

 

何度も自分自身に問うたけれど、答えは出ません。

 

自分は生きていると、確信を持って答えることができない。

 

ぐるぐるぐつぐつもんもんと。

 

頭の中に宇宙を作っては答えを探す日々。

 

出口のない迷路にはまることほど、嫌なものはありません。

 

「何で私は生きているのでしょう」

 

聞いても、答えてくれた人はいません。

みんな驚いたような顔で、困ってしまうのです。

 

「いっそ、楽に死ねたらいいのに」

 

生への疑問が、いつしか死への希望になっていました。

 

「ここで死ねたら、どれだけ楽だろうか」

「でも、みんなを悲しませてしまうのも嫌だ」

 

心の中に溜まった宇宙を誰にも話せずにいました。

死に染まる宇宙は少しずつ、心の中に広がっていきました。

 

 


 冒頭部分の試し読みでございました。

『天井の宇宙人』は『百年の透明から脱色できた日』と同じ冊子に収録して販売いたします。

冊子は挿絵がついて、お値段据え置き、ボリューミーな仕上がりとなりますのでぜひお楽しみに♪