時代の移り変わりを眺めていることしかできない。傍観者といった方が正しいだろうか。
「想定外の事態が起きた場合。彼らから情報を集めた後、国の復興を手伝わせるんだそうです。
そして世界を元に戻した後、また旅が始まります。それの繰り返しですね。
神様が直接手を出して何かすることは絶対にないそうです」
崩壊した国で絶望している人々の目の前に現れるだけでも、希望になると思う。
神様はそれすらも、しない。
「とある時期を境にして、依り代たちはどこかにごっそり消えています。それがもう数十年も前の話です」
僕が生まれる前の話だ。何がきっかけで彼らが消えたのだろうか。
専門書にでも載っているだろうか。
「それに対応するために、『依り代』たちは呼び出された」
神様が呼び出したはいいものの、それに対応しきれなかった。
それ以降、依り代が増えていないのも、それが原因だろうか。
大きく数を減らしても、彼らの役割は変わらないらしい。
今も世界を回っているのだろうか。
「まあ、これくらいですかね。現状で分かったことは。質問ありますか?」
とりあえず、僕の説明はこれで終わった。
「神様って何もできないんだな。ていうか、やる気なさすぎだろ」
つゆが吐き捨てるように言った。まさにその通りだから、何とも言えない。
決してやる気がないわけではないのだろうが、思っていた以上に干渉していなかった。
放任主義なのだろうか。よく分からない。
「ていうか、何で私が神様の使いだって分かったんだろうね。だって、神様は誰にも教えていないんでしょう?」
「確かに。情報元は何だろう」
「神様に通じる何かがいる、とか。私みたいに他に『依り代』がいるのかも」
「裏切り者ってことか……そこらへんは戻ってみないと分からないだろうな」
「戻る? どこに?」とつゆ。
「……いや、そもそもシロを連れ戻すためにここまで来たんでしょう?
まあ、話がかなり飛んじゃったのは事実だけど」
彼はそういえばと、小さな声で言った。それを聞いた僕とはなはため息をついた。「目的を忘れるな」と言葉が被ったのは言うまでもない。
「ていうか、先生も戻るのか?」
「まあね。一生ここにいろって言われたわけでもないから。
とりあえず、上に報告するかどうかは置いておきましょう。全ては向こうへ戻ってからです」
「……」
「お二人の準備が終わったら、いつでも声をかけてください」
「だってさ。なるべく早くね」
彼がここを離れたくないというのは、分からないでもない。
向こうよりもはるかに過ごしやすいのだろう。だが、ここにいる意味はない。目的は果たされた。
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