「さすがにそれはないだろ。誰か協力者がいたんじゃないのか?
こっそり誰かが地下牢獄に忍び込んで、逃がしていたとかさ」
竜巻の話が信じられないのか、みかんはすかさず反論した。
そんな馬鹿みたいなことをするのが信じられないらしい。
「とりあえず、普通に扱うのが一番だと思うけどね。特別扱いしないでさ。
ただの子どもなんだし。そう考えると、あの二人に預けたのは悪くない選択だったのかもね」
「まあ、あそこの隊長殿はあの青いのの面倒を見ているくらいだしなあ。
一人くらい増えても平気だったんじゃないか」
つゆをだしにして、あの子を押し付けたように思えてきた。
あの子の面倒自体、はなはまんざらではなかったようだ。
そうでなければ、つゆを任されるはずがないか。
「さあて隊長、このままお仕事しちゃう? どうする?
仕事は山ほど溜まっているんだけど」
「そう、それだよ。しばらくの間、こっちの仕事を放っていた訳でしょ?
こっちに復帰できるのかなと思って。さっき戻っても大丈夫って聞いたから、来ちゃったんだけど。
知らない間にクビになっていたとか、ないよね?」
一番気になっていたのはそこだ。高等遊民も冗談ではなくなってしまう。
それだけは何としてでも避けたい。
「そこは大丈夫でしょ。何のために隊長代理を名乗っていたんだって話だし」
「ずっとその名前を守って来たんですもの。奪われることはありません。ね!」
二人はみかんを見る。みかんは気まずそうに眼をそらす。
「やっぱり、あんたじゃないと隊長は務まらないっていうのかな。
まあ、そんなところ。帰って来て本当によかった」
帰りを待っていた人たちがここにいた。やっと帰って来た。もう大丈夫。僕は軽くこぶしを握る。
「じゃあ、復活ってわけだ。待たせたね」
三人を見て、僕は笑う。 じわじわと、帰って来たという実感がわいてくる。
「それなら、どっか店借りてやるか。来れるやつ全員呼んで盛大にやろう」
二人は顔を突き合わせて話が進んでいく。
「隊長はいつでも大丈夫だよな。あの三人とつるんでいるくらいだし」
にやりと笑みを浮かべて僕を見る。僕は少しだけ笑って肩をすくめる。
「いいよ。やろうやろう」
「じゃあ、決定だね」
喜びで彼らは三人で手を叩きあった。
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