依り代がたどる道 第16歩目


 

「さすがにそれはないだろ。誰か協力者がいたんじゃないのか? 

こっそり誰かが地下牢獄に忍び込んで、逃がしていたとかさ」

 竜巻の話が信じられないのか、みかんはすかさず反論した。

そんな馬鹿みたいなことをするのが信じられないらしい。

「とりあえず、普通に扱うのが一番だと思うけどね。特別扱いしないでさ。

ただの子どもなんだし。そう考えると、あの二人に預けたのは悪くない選択だったのかもね」

「まあ、あそこの隊長殿はあの青いのの面倒を見ているくらいだしなあ。

一人くらい増えても平気だったんじゃないか」

つゆをだしにして、あの子を押し付けたように思えてきた。

あの子の面倒自体、はなはまんざらではなかったようだ。

そうでなければ、つゆを任されるはずがないか。

「さあて隊長、このままお仕事しちゃう? どうする? 

仕事は山ほど溜まっているんだけど」

「そう、それだよ。しばらくの間、こっちの仕事を放っていた訳でしょ? 

こっちに復帰できるのかなと思って。さっき戻っても大丈夫って聞いたから、来ちゃったんだけど。

知らない間にクビになっていたとか、ないよね?」

一番気になっていたのはそこだ。高等遊民も冗談ではなくなってしまう。

それだけは何としてでも避けたい。

「そこは大丈夫でしょ。何のために隊長代理を名乗っていたんだって話だし」

「ずっとその名前を守って来たんですもの。奪われることはありません。ね!」

二人はみかんを見る。みかんは気まずそうに眼をそらす。

「やっぱり、あんたじゃないと隊長は務まらないっていうのかな。

まあ、そんなところ。帰って来て本当によかった」

帰りを待っていた人たちがここにいた。やっと帰って来た。もう大丈夫。僕は軽くこぶしを握る。

「じゃあ、復活ってわけだ。待たせたね」

三人を見て、僕は笑う。 じわじわと、帰って来たという実感がわいてくる。

「それなら、どっか店借りてやるか。来れるやつ全員呼んで盛大にやろう」

二人は顔を突き合わせて話が進んでいく。

「隊長はいつでも大丈夫だよな。あの三人とつるんでいるくらいだし」

にやりと笑みを浮かべて僕を見る。僕は少しだけ笑って肩をすくめる。

「いいよ。やろうやろう」

「じゃあ、決定だね」

喜びで彼らは三人で手を叩きあった。

 

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