渋々彼について行った先は大通りだった。正面からまっすぐに道が伸びて、斜めに曲がっている。
だが、その先の建物と曲がり道の角度が急なことも手伝って先が見えない。
島から戻って来た時にこの道を通って行った。あの時は薄暗くて、周りがよく見えていなかった。
改めて見ると、何かを隠しているようにすら、見受けられる。
恐らく、シロを隠すためにここを選んだのだろう。
その先の道に誰一人として行こうとしない。道の先に行かない僕たちを不思議そうに町の人々は見る。
その人々の中で、明らかに避ける人がいる。
どうやら管理人二人が並んでいるのが気になってしょうがないようだ。
「この先にさ、彼らの家があるんだよ。依り代ちゃんを押し付けられたときに向こうの屋敷に越してきた。
魔女の道とかって僕らは言ってるんだ。まあ、まず誰も近寄らないよね。
子どもたちによれば、この先には怖い魔女がいて屋敷に来た人間を食べちゃうんだって。
最も、僕が言いふらしたんだけど」
周囲の目など、どこ吹く風だ。僕たちを避けて歩く人々のことなど、まるで気にもしない。
「それで?」
「よく見てもらうと分かるんだけど、この曲がり道の角度と周りの建物で上手に隠しているんだよ。
この道をまっすぐ行けばあの屋敷に行けるのさ」
「学者殿?」
振り返るとはなが立っていた。目を丸くして、僕たちを凝視している。
「やあ、久しぶりだね。元気そうで何よりだ」
彼がとんとんと、はなに歩み寄る。
「何故、あなた方がここに?」
眉をひそめて、こちらを睨んでいる。
「いろいろと話をしていたんだよ。現状報告とかね。その流れで連れてきてあげたんだ。
まさかこんなところで会えるとは。心配していたんだよ。
もうこっちには帰ってこないんじゃないかって、思っていたんだから」
ぐっと顔を近づける。まさに噛みつかんばかりだ。
「でも、聞いたよ? 失敗したんだってね?
彼女から聞いたけど、何もできなかったらしいじゃない?」
僕は彼の前に割り込んだ。
「何のつもり?」
視線は僕を移す。見たくもなかったが、仕方がない。
「そんな怖い顔して僕を見ないでよ。別に何もしていないんだけどな」
何も答えない。ここからだとはなの表情はうかがえない。
「なあ、おい……あれって」
ひそひそと話す声を聴いて、横を見る。
いつの間にか人だかりができていた。管理人二人に目をつけられ、連れて行かれそうになる状況。
どんな大罪を犯せばこんな状況ができあがるのだろうか。たまたまそこにいただけのはなが哀れに思えてきた。
「おっと、これはまずいな。それじゃあ、また今度、ね」
彼はそそくさとその場を去っていった。それでも人だかりは収まらない。
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