「そんなに悪い奴じゃないんだけどね。色々と飢えてるだけなんだと思う」
「飢えている、ですか」と、ぼたんは繰り返す。
「だから、構ってるのか?」
「構っているのとはちょっと違うかな。向こうから来るんだよ。何も言わなくても、僕を見つけたら勝手に来る」
「まさに犬だな」
くちばは笑う。本来の自分の主人より懐かれているのはどうかと思うが、時間の問題だ。
僕が気にして焦っていても仕方がない。
「まあ、別にいいんだけどねえ……変になめられているよりかはずっと楽だし」
それもまた事実だ。はなみたいに反抗的な態度ばかり取られていては、面倒で仕方がない。
気楽に付き合えるのも悪くはないのだ。
「ちなみに、あの青いのがうちんとこに来てたら、どうしてたんだ? 可能性としては、なくはなかっただろ?」
「満場一致で追い出すんだろ? 知ってるよ」
「俺らの意見じゃなくて、隊長はどうしたいんだ?」
考えたこともなかった。医療班の中に、つゆを迎え入れる。
正直、想像もつかない。 それでも、はなの元にいた方がいいような気もする。
「ま、最後まで付き合うつもりなんでしょ?」
「そりゃねー。乗りかかった船ですから」
「嫌になったらいつでも船から降りてこい。話くらいは聞いてやるさ」
「じゃあ、お土産話にでも付き合ってもらおうかな」
ちゃんと帰ってくる場所がある。それだけで安心できる。
数週間後に戻ってくることを改めて、決意した。
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