依り代がたどる道 第27歩目


 

何から説明をすればいいのか、私たちですら分からない。未だに言葉にできない存在だ。

「それで、明日から探すわけなんだけど」

簡単に説明を受けたのち、私たちは宿屋に戻って、休憩していた。

「本当に協力してくれるのかな。深く突っ込んでこなかったのはありがたかったけど」

「ああ言ってるんだし、協力してくれるとは思うけど……いいか? 

何度も言うけど、依り代のことは、なるべく話さないように」

「分かったって。依り代じゃないアイツのことを話せばいいんだろ?」

依り代じゃないアイツか。まあ、間違ってはいないか。手渡された地図を見る。。

明日から交代で捜索に参加させるらしい。とりあえず、今は荷物を置きに宿屋へ向かう。

「逃げましたね?」

彼女は背後から刃物を突き付けて、私を脅すようにささやいた。

「何のことですか?」

ため息まじりに私は答える。

「どうして来なかったんです? 待っていたんですよ? しおんさん」

 一歩ずいと、前に出る。この前の約束のことを言っているらしい。

そういえば、そんなことを言われていた。しおんを紹介すると言っておきながら、私はその場には行けなかった。

会議があったのは本当のことだ。それで、来られなくなってしまったのもまた事実。

確か、あの時は彼女にすべてを任せてしまっていたんだっけ。

仕事の休憩の間に二人に連れ出されたらしいし、何かと面倒をかけている。

あまり邪魔をするなとは言ってあるのだが、どうも聞かない。私の言い方が悪いのだろうか。

それとも、彼女といた方が気楽なのだろうか。そこはよく分からない。

「で、どうするんですか?」

「……また今度に行きますから」

「それっていつです?」

彼女は鋭く切り返す。

「貴方までそんなことを言わないで下さいよ……」

もう何回くらい、同じセリフを言われただろうか。

こうして責められるほど、しおんの元を訪れていないわけでもない。

「どうにも苦手なんですよ。あの人」

「逃げたことは認めるんですね?」

答えるかわりにため息をついた。

「それにしても、あなたにも苦手な物ってあったんですね」

「物ではなく者、ですがね。何だか誤解されてるみたいで……正直、面倒なんです」

「誤解?」

「恋に恋するってやつです。どうかあの口を黙らせてはくれませんかね、お医者さん」

「残念ながら、僕ではどうにもできませんよ」

彼女はおどけながら、両手を上げる。面倒事に巻き込まれるのはごめんだとでも言いたげだ。

「じゃあ、もう手遅れですね」

私は肩をすくめて笑った。

 

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