依り代探しが始まった。僕はしぐれと共に、裏通りを探索することになった。
初めて来た場所なら、確実に迷子になるとのことだ。
人通りの多いところから外れただけで、雰囲気が変わる。
通りを歩く人も少ないし、建物の雰囲気もどこか暗い。太陽の光が当たらず、影が落ちているからだろうか。
道を行く人々も不思議そうに僕たちを眺めて来るだけだ。そんなに新参者が珍しいのだろうか。
「うーん……こっちには来てないみたいだ」
しぐれは首をひねりながら、地図を見ている。町一帯の地図には、依り代を示すものは何も現れていない。
ここにいないということは、もう砂漠の神殿に行ってしまったのだろうか。
「行きそうな場所に心当たりとかない?」
この町に来るのも久しぶりのことだ。どこに何があったか、うっすらとしか思い出せない。
記憶に残っているその場所も、子どもが行くとは思えないところばかりだ。
依り代としての心当たりなら、いくつかある。竜巻を起こしたところを誰かが見たかもしれない。
だが、今はただの子どもとして探している。どちらにせよ、何の役にも立たない。
「白い髪の女の子、なんだよね? すぐに見つかりそうなもんだけどなあ」
人を探すというより、依り代として探してしまった方が早いような気がしてきた。
それなら、図書館で文献を探した方が早いだろうか。それとも、砂漠の神殿に関する情報を探した方がいいだろうか。
人探しではなく、依り代として探す方法を考え始めたそのときだった。
言葉にならない言葉を喚き散らしながら、誰かが曲がり角から逃げてきた。
僕たちもその曲がり角へ向かう。見慣れた青髪がしゃがんで、彼に何か話しかけているようだった。
「そこ! 何やってるんだ!」
「うわっ! じゃあな!」
彼は彼でその声に驚きながら、その場を走り去った。
隣にいた僕に気づいていないようだった。一体、何をしていたんだろう。
どうやら、ここは共通で使われているゴミ捨て場らしい。
適当に詰め込まれたゴミ袋は山となり、青いポリバケツはふたが外れ、中身が見えている。
その奥に10代前半ごろと思われる黒髪の少年がいた。洋服についたほこりを手で払っている。
「一体、何があったの?」
「別に。何もない」
「何もないのに、あんな風に逃げるわけないと思うんだけど」
確かにその通りだ。あの逃げる姿は、何かまずいことをした子どものようだった。
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