依り代がたどる道


 

「つゆ、昼間は何してたんだ? 何やら、もめごとがあったそうだけど」

 

はなが睨みつける。しぐれたちと別れ、宿屋に戻っていた。

どうやら、依り代はこの周辺に姿を現していないらしい。

 

目撃者が一人もいないというのがおかしな話だ。

明日からは範囲を広げて捜索するとのことで話はまとまった。

 

「いや、けんかを止めてただけだって……」

 

少年が男ともめており、雲行きが怪しくなってきたところで止めに入ったとのことだ。

男はすでに酒に酔っており、話が通じそうにもなかった。

あのままでは少年が危ないと思い、間に入ったらしい。

 

その男が逃げたところを僕たちが居合わせた。

 

「ということは、見ていたのか? その二人のこと」

 

「見てたっていうか、気になっただけだよ。観察してたら、やっぱりなって感じだっただけ。

まさか、先生たちがいるとは思わなかったけどな」

 

しぐれの声に反応して思わず逃げてしまったらしい。

そのこと聞いて、はなはため息をついた。

 

「それにしても、この町を探しても無駄なんじゃないか? 誰も見てないんだろ、アイツのこと」

 

「一応、竜巻が発生した記録はあるんだけどな……それがあの子によるものかどうかは分からない。

その時の状況を明日は確認するか」

 

人間が竜巻を起こして、遠くへ飛んで行った。そんな話、誰が信じるだろうか。

今回の依り代探し、思っている以上に苦戦しそうだ。

いざとなったら、3人だけで神殿に向かうことも考えないといけないかもしれない。

 

「とりあえず、しばらくは様子を見よう。何か手がかりがあるかもしれないし」

 

まだ何もないと決まったわけではないしな、とはなは言った。

 

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