依り代がたどる道 第29歩目


 

「ここでもだめか……ありがとうございました」

 

軽く頭を下げた。範囲を広げても、誰もシロの姿を見かけた者はいない。

考えてみれば、竜巻が起きる瞬間を見た人は限りなく少ないのかもしれない。

 

「あの、シロちゃん、本当にここに来てたんですよね?」

 

「お手数をお掛けして申し訳ありません。確かに、数日前にこの町に来ていたみたいなんですが」

 

ため息をつかれる。これだけ探しても証拠一つ見つからないとは思わなかった。

さっさと切り上げて、神殿に向かった方が早いかもしれない。

 

「ああ、そうだ。うちの子から聞いたんだけど、昨日、危なかったところを助けてくれたんですってね。

ありがとうございました」と、女性は頭を下げた。

 

よくよく話を聞いてみると、男性ともめていたところを助けてくれたらしい。

青い髪の若い男性で、警備が来るとすぐにどこかへ行ってしまったとのことだ。

つゆのことだろうか。そして、その警備は僕たちのことだろうか。

 

「お礼を言えなかったみたいだったから、その方に伝えておいてください」

 

「分かりました」

 

「あの周辺を歩くとき、注意して下さいね。何かあるか、分かりませんから」

 

「分かった。よく言い聞かせておくから」

 

再度ため息をついて頭を抱えているあたり、治安はあまりよくないらしい。

その場を後にして、彼は足を止めた。

今は中央通りを見回っており、人通りはそれなりに多い。

 

「なあ、本当に大丈夫なのか?」

 

低い声で聞いてきた。

 

「何がです?」

 

「その探してるって子ですよ。

これだけ探して何も見つからないってことは、何かあったんじゃないですか?」

 

何かあったどころの騒ぎじゃないんだよなあ。と、僕は思いつつ話を聞く。

 

「何か他に思い当たることとかないんですか?」

 

彼女の正体が依り代だと分かったら、どんな反応をするんだろう。

少しだけ気になった。

 

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