それにしても、青い髪か。珍しいなあ。あまり見ないなあと、観察をしている。我ながら、のんきなものだ。
「何じろじろ見てんだよ」
彼の表情から笑みが消えた。刺さるような殺気に僕はたまらず一歩下がった。
拳銃を構えては見たものの、彼はそれ以上何もしなかった。これで改めて分かった。
僕はまともに戦えない。
「なあんだ。持っているんじゃないですか」
はなは楽しそうに言う。こちらはちっとも楽しくない。
「けど、これは借り物でね。傷をつけるわけにはいかないんだ」
僕は彼らに銃口を向ける。
「……それはここにいた罪人のものですか?」
「……」
答えられなかった。沈黙を肯定と受け取ったらしい。彼はつゆに剣を納めるように促した。
僕もそれに習って銃をおろした。二人は姿勢を直し、敬礼をした。僕も続けて真似る。
このポーズをとるのも、久々だった。彼らはすぐに手を下ろした。僕も手を下ろす。
「彼らなら、戦争で全員お亡くなりになりました」
ただ、はなは淡々と告げた。そこに重々しさも、軽々しさもなかった。不思議と、涙は流れなかった。
「戦争の結果はボロ負けです。どっちもかなりの被害を受けましたが、最後まで押されっぱなしだった。
こっちはツェーリと同盟を結んだことで何とか保っているんだけど……もうしばらくは荒れるでしょうね」
「……」
「少し、彼らの話をしても?」
「どうぞ」
「彼らはね、勝つつもりでも、負けるつもりでもいなかったんだ。何か全く別の目的を持って戦ってるように見えました。
ですが、その目的が何だか全く分からない……。
思い切って聞いてみれば、彼らは最後まで貴方の元へ帰れると信じていましたよ。
全員が『生きて帰って先生に報告するんだ』と。キラキラした目で話していて羨ましかった。
帝国から離れてこんなところに残っているくらいだから、どんな変人奇人がいるかと思っていたら……君はとんだ幸せ者ですよ。 それから『先生に拳銃を預かっている』と言っていた奴からは『死んでも大切にしてくれ』と。
遺言になってしまったのが残念です」
「わざわざ聞いてくれて、ありがとうございました」
お辞儀をした。初めて彼は微笑んだ。とりあえず、敵意はなくなったようだ。
「まあ、それが私の役目でもありましたから。ところで、ひとつ聞いても良いでしょうか?」
「僕に答えられる範囲であれば、何でも」
「『依り代』って何ですか?」
「それって……」
「上が彼女は『依り代』だから、絶対逃がすなとうるさいんです。私とつゆ、それからシロを一緒に閉じ込めたのでしょう」
「どういうことでしょう?」
←1 3→