依り代がたどる道 第3歩目


 

「要は、見張り役。私たち二人で彼女があそこから逃げ出さないようにね」

「調査任務で出張しろだの何だの言われてきたんだけどさ……。

結局、俺らにアイツを押し付ける口実が欲しいだけなんだろうな。アイツは隙あらば脱走しようとするからな。

すげえ大変だった……それで、アンタなら何か知っているんじゃないかって、な?」

ようやくつゆは口を開き、はなを見やる。彼はうなずく。この大脱走を機に、僕に接触したらしい。

「それで、何か心当たりは?」

「僕もシロから初めて聞いたんです。『依り代』って呼ばれているって。

それで、貴方たちに聞こうと思って……とにかく、彼女を連れてきます。小屋の中へどうぞ」

僕は彼らにそう言った。彼らは小屋の中へ入っていった。

「何でいるのよ? 何で来たのよ! 何で分かったのよ! 誰にも話してないのに! こっそり逃げ出したのに!」

シロは彼らの顔を見た瞬間、不満そうに言った。頬を膨らませている。しかし、僕の後ろに隠れている。

二人は扉を背にして、座っている。つゆは口うるさく反論するのに対して、はなは完全に黙殺していた。

「るせえんだよ! クソガキ! ちょこまか逃げ回ってんのはてめえのほうだろが! 

黙ってどっか行くなっていつも言ってんだろ! ふざけんな!」

「どこまで追ってくるからでしょ? 鬼ごっこをした覚えはないんだけど!」

「それはこっちの台詞だ! むしろ、どうやってここまで来たんだ! 

勝手に船に乗り込んだかと思えば、こんなところにいやがって……!」

「……別になんだって良いでしょ! 閉じこめるほうが悪いんだもん!」

「てか、こんなとこにまで来やがって……どんだけ迷惑かけてんのか、分かってんのか? 

大体、何でアンタも疑わねえんだよ。怪しいとは思わなかったのか?」

「……アンタがしつこすぎるだけなのよ。学者さんも何で追い返さないのよ?」

「もうやめろ。お前ら……すみません。顔つき合わせるといつもこんな感じで」

慣れた手つきでけんかを止める。二人はにらみ合った末に、顔をそらした。 どうやら、そちらはそちらで終わったらしい。

「それで、詳しく聞かせてもらっても良いかな?」

「さっき話したとおりです。上が彼女を欲していて、私たちは監視役。監視する理由とか全く話しちゃくれないけど」

「『依り代』ねえ……」

何度言われても全くぴんとこない。帝国にいた時も耳にしたことがない。

見落としているのであれば、本に何かしら載っている可能性はある。

しかし、僕の部屋なんて処分されているに決まっている。今頃、誰かの根城と化しているだろう。

最初からあてになんてできない。 そもそも、どうして帝国はそんなものに執着を見せ始めたのだろうか。

向こうで何かあったとしか考えられない。

 

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